プラトニック・ラブ=純愛じゃない!本当の意味とは

From:DENNY喜多川

肉体の繋がりを目的としない、精神の繋がりだけを求める純粋な愛。
「プラトニック・ラブ」が死語となって久しいが、そもそも「プラトニック・ラブ」が誤用であることはご存じだろうか。

プラトンと師ソクラテス

「プラトニック・ラブ」の「プラトニック」は、「プラトンの」を意味する。
プラトンとは、古代ギリシャの哲学者で、ソクラテスの弟子、アリストテレスの師である。

プラトンの師匠ソクラテスは、「弁証法」を用いて古代ギリシャ哲学を発展させた、偉大な哲人であり、「無知の知」という考え方で知られている。

しかし、ギリシャ政府から疎まれ、「神々に対する不敬と、青年たちに害毒を与えた罪」で死刑を宣せられた。

弟子たちは亡命を勧めたが、
「悪法もまた法なり」
と、ソクラテスは逍遥として毒杯を仰いだ。

ソクラテスは著作を遺さなかったので、プラトンをはじめとする弟子たちは、ソクラテスの言動を著作として記録することに没頭した。
しかし、プラトンはやがて師を離れ、「イデア論」をはじめとする独自の哲学を構築していく。

古代ギリシャの少年愛(パイデラスティア)

さて、この古代ギリシャでは、愛と言えば、まず第一に「パイデラスティア(少年愛)」のことであった。
大人の男性と少年との間のパートナーシップこそが、真の愛であるとされたのである。

アテナイでは暗黙に認められた市民の義務であり、スパルタでは法文化された義務ですらあったのである。

大人は少年をパートナーとし、市民としての義務や徳目を教えて肉体を鍛え、その代償として肉体の愉悦を得る。
「少年愛」は、市民階級の男性のための教育制度であった。

プラトンの説いた
『プラトニック・ラブ』

しかし肝心のプラトンはと言うと、この制度に対し、疑念を呈していた。
プラトンは
「肉体に惹かれる愛よりも、精神に惹かれる愛の方が優れている」
と提唱した。

これこそが「プラトニック・ラブ」。
「プラトニック・ラブ」とは、「大人と少年の間のパートナーシップにおいて、肉体ではなく、精神を愛すること」だったのである!

プラトンの孫弟子・アレクサンドロスの同性愛

ちなみにプラトンの弟子である、アリストテレスのそのまた弟子が、世界征服を果たしたアレクサンドロス大王(アレクサンドロス三世)。
彼も側近のヘファイスティオンと男色関係にあった。

ヘファイスティオンが死んだときには、彼を救えなかった医師を殺し、エジプトに大規模な霊廟を建設させると共に、ヘファイスティオンを神として祀らせた。

戦争に利用された同性愛

大人の男性と少年とのパートナーシップを「愛」と呼んでいた古代ギリシャにおいては、その絆が戦争に用いられることもあった。

都市国家テーバイは、大人の男性と少年のカップルを一つの単位とし、そのカップルのみにおいて構成された最強部隊「神聖隊」を編成したのである。
その総勢は、百五十組三百人。

パートナーの前で敵に後ろを見せることは、最大の恥であったから、彼らはどんな強大な敵に対しても、一歩も退くことなく勇敢に戦った。
ましてやパートナーが倒れれば、その仇を討つべく、さらに勇猛に戦ったのである。

「神聖隊」を率いたのは、テーバイの智将・エパメイノンダス。
彼と神聖隊は、ギリシャ最強のスパルタ軍をも撃ち破り、テーバイは一時、ギリシャの覇者となった。

しかし、自ら最前線でパートナーと共に戦ったエパメイノンダスは、スパルタとの戦いに勝利しながらも戦死した。
パートナーに、最前線で戦う勇敢な姿を見せようとしたことが原因とも言われている。

エパメイノンダスの死後も猛威を振るい続けた神聖隊だが、やがてフィリッポス二世(アレクサンドロス大王の父)との戦いにおいて敗北、壊滅する。
アレクサンドロス率いる騎兵隊によって壊滅に追い込まれた神聖隊は、撤退も降伏も良しとすることなく戦い抜いたのである。

戦い終わった戦場には、パートナーと手を握り合ったまま息絶えた多数の遺体が遺され、勝利したフィリッポス二世も、彼らの勇猛を言葉を尽くして讃えたという。

 

現代では『プラトニック・ラブ』は男女間の間で用いられ、『プラトニック不倫』なるものも存在するらしい。
プラトニック・ラブが、再び語源通りに用いられる日は来るのであろうか。

photo by Javmorcas

 

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DENNY喜多川

iOSアプリ「セックスの日本史」著者。「歴史は夜作られる」すなわち、セックスこそが歴史を作ってきた、との信念に基づき、研究を続ける歴史研究者。「知っているか?人間のペニスにカリがあるのは、他のオスの精子を掻き出すためだ!」