リアルなBLの世界!森鴎外『ヰタ・セクスアリス』の時代

From:DENNY喜多川

BL好きの腐女子の間では、寄宿学校や男子校、男子寮などは男色の巣窟とされてきた。
しかし、それが腐女子の単なる妄想ではなく、事実だった時代が日本にもあった、と言うのは驚きの事実であろう。

明治時代、文明開化が行き渡り、エリート階級としての「学生」が発生した頃の話である。
その頃、まだ女子の通える学校は存在せず、全ての学生は男子であった。

「あしたのジョー」「巨人の星」原作・梶原一騎先生の実弟であり、自らもマンガ原作者である故・真樹日佐夫先生も、少年院生活を振り返って、こうおっしゃっておられる。

「女がいりゃあ女とヤるけど、いないもんはしょうがねえだろ」

そう。
男子だけの生活において、男色の発生は、必然なのである。

坪内逍遙『当世書生気質』の描く
「理論上の男色」

明治初期の学生生活を描いた、坪内逍遙の小説『当世書生気質』の登場人物はこう主張する。
「女色に溺れるくらいなら、男色に溺れるほうがまだ良いわい。第一、男どうしなら、お互いに智力を交換することもできるしなあ」

「しかし男色は、アンチ・ナチュラル(反自然的)ではないか?」
との反論に対しては、
「ただただ理論上に行うんだから、少しも破廉恥の理由などないわい」

ウム、わからん。
とにかくこの本は飛ぶように売れて、一世を風靡したのである。

森鴎外『ヰタ・セクスアリス』の描く男色の現実

『当世書生気質』では一応「理論上」すなわち、プラトニックな男色であることが強調されていたが、これが少し時代が下って、明治後半の学生生活を描いた、森鴎外『ヰタ・セクスアリス』になると、

「年長の書生が、そのうちに手を握ってくる。頬ずりをする。(中略)ある日寄って見ると、ふとんが敷いてあった。(中略)
『君、ちょっとだから、ふとんへ入って一緒に寝たまえ』」

理論上どころか、実に直接的である!
ちなみに森鴎外自身も、学生時代は「美少年」として貞操を幾度も狙われ、護身用にナイフを持ち歩いていたというではないか!

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DENNY喜多川

iOSアプリ「セックスの日本史」著者。「歴史は夜作られる」すなわち、セックスこそが歴史を作ってきた、との信念に基づき、研究を続ける歴史研究者。「知っているか?人間のペニスにカリがあるのは、他のオスの精子を掻き出すためだ!」